桃太郎外聞

*桃太郎外聞
鬼ヶ島から戻った桃太郎は英雄になった。
領主からもお褒めの言葉を頂戴し、地頭になり、郷里の村の他も治めた。
鬼から奪った宝は、村人に配ったり、治水工事したり、寺社に寄進したりして殆ど無くなっていた。村人たちの喜ぶ顔が一番の宝になっていた。
両親も、一緒に戦った雉や猿や犬も既にこの世にいない。50に手の届く桃太郎は自ら築いた堤を歩くのが日課になっていた。
そんな折、領主の臣下が来た。隣国で黄色い鬼の群れが現れ暴れている、隣国の領主が鬼退治の桃太郎の噂を耳にし、救いを求めて来たと話す。
「領主様も是非とも桃太郎殿にお願いして助けて上げたい、と仰せです」
桃太郎は、老いて、供もおらず、今の私では何も役に立たないと存じます、と拒んだが、家臣はどうしても退治に向かって頂きたい、と言って引かない。隣国の領主に今の自分を見せれば役立たずとお分かりになるだろう、と思い、隣国へ旅立った。
隣国では黄色い鬼の残虐さを語る者が多く、怯えている村人ばかりであった。
領主は桃太郎を丁重にもてなし、桃太郎が「老いて、供もいないのでお役に立てない」と断っても、
「是非とも貴殿にお願いしたい。必要なものは用意してある。桃太郎殿が黄色い鬼を退治してくれると国中に知らせた。鬼の耳にも入っていよう」と言う。
「期待しておる。貴殿の勇姿は、この国の民にとっても希望なのじゃ」
桃太郎は断れずに首を縦に頷くしかなかった。
領主が自慢げに「準備は十分じゃ、以前鬼退治された時の十倍も用意した」と言って、「ここへ持って参れ」と家臣に命じた。
領主が桃太郎の前に差し出した。それは、月見の時の団子の如く盛られたきび団子30個の山だった。
                 By harukanaumi