宇多田ヒカルニューアルバム「FANTOME」ファントーム

桜流し」をCDで欲しくて買ったのだが、
「道」「俺の彼女」「二人だけのバカンス」「忘却」など結構気に入っている。
通しで聞くと非常に面白い。
「道」で必死に一人で生きようとしているのに、「俺の彼女」でアンニュイな人生を皮肉り、「花束を君に」で溢れる思いを君に伝えようとし、「バカンス」で短期の逃避行をし、「人魚」で会えないあなたを偲び、「ともだち」で同性愛を語り、「真夏の通り雨」で過去を忘れられなくて泣く、「荒野の狼」で孤高を弄び、「忘却」で断捨離を主張し、「人生最高の日」で着飾る恋心を歌い、「桜流し」で最後に愛を見つけたい。
8年ぶりのアルバムだが、ベストアルバムの感がある。それでいて通しで聞きたいと思わせるのは流石というか。
詩だけではなく、曲も凝っている。ヘッドホンで聞くと不可分な音作りであると分かる。
派手な音作りではないから物足りなさを感じる人もいるかもしれないが、私には心地よかった。
肩ひじ張った音ではなく、ハープやバイオリン、バス、アコギ等が宇多田の声の主旋律を優しく囲む感じがして心地よかった。余分な音が無い。宇多田の吐息さえも必要な音。
「俺の彼女」が好き。「忘却」の高音もすごい。椎名との「バカンス」の低音もすごい。
「人生最高の日」でいつも笑ってしまう。そして「桜流し」になるこの流れ、わざと「人生最高の日」を入れたとしか思えない。
ここまで変化するとは想像していなかった。斜め上をいつも進んでいる。宇多田ヒカルのアルバムは躊躇なく買える。アルバム曲に捨て曲が無い。
33歳だからこそ作れた作品。次のアルバムがどう変わるのか期待してしまう。
復帰してくれてありがとう。