二時間だけのバカンス

椎名林檎と歌うのはカーペンターズの曲以来。MVは楽しそうな、百合っぽい二人。
歌詞に「授業さぼって」とあり、学生と人妻の不倫か、と受け取られそうだが、学生時代から二人は百合だったと言う時間推移が語られているだけと思う。宇多田の歌詞にはこういう突然過去に行ったり未来に飛んだりすることがある。
今回のアルバムで好きな曲を一つ選べ、と言われたら多分分散されるだろう。「道」「花束」が多いと思うが「ともだち」も「狼」も「バカンス」「最高の日」「俺彼女」もそれぞれ「忘却」「通り雨」「桜流し」「人魚」も一番だと主張する人が居ると思う。個々の曲がそれぞれ訴える相手が違うからであろう。それだけ個々の自己主張が強いのだが、アルバムでは皆幻のように漂うのである。
初期の宇多田ヒカルが好きな人は「これじゃない」と言うだろうが、宇多田ヒカルと同年輩以上の人にとって「これもあり」と受け止められるアルバムだろう。
久しぶりのアルバムだから売れているのかもしれないが、宇多田ヒカルの底知れぬ才能を垣間見た思いがするアルバムだからという理由もあると思う。むしろ次回作を楽しみにしている。
aikoのように不変が良いのか、林檎のように林檎節を貫く方が良いのか、宇多田のように一作ごとに変化するのが良いのか、ともあれ、「これもあり」と思わせる宇多田に期待してしまう。